<読書>『マジカルグランマ』誰にでもホームランのチャンスはあるかもしれない

地元図書館に貸出予約していた柚木麻子著『マジカルグランマ』の順番がやっときました。

描写が細かすぎてなんだか読むのが面倒、というのが第一印象です。でも、ずいぶんと待ったわけですし、出かける予定もなく時間があったので、いっきに読了。

主人公の正子は75歳です。家庭内別所状態で、夫が元映画監督のため年金がなく、経済的に困窮。ということは下流老人なのかと思いきや、そうでもありません。住まいは金持ちの夫が所有する超豪邸。若い頃は女優で、そこそこの美貌。白内障のほかに持病なし。ひとり息子は男性と同居しているものの、正子との関係はまずまず良好。かなり好条件と言ってもよい高齢者の設定です。

とはいえ、手持ちの現金がないので、シニア女優のアルバイトを始めたところ、たちまち人気者に。

ところが、家庭内別居していた夫が亡くなった際の発言がもとで叩かれ、人気は急降下。そこへ夫が監督した映画のファンだったという若い女性が現れ、ふたりで自宅の骨董品などをメルカリで売り、さらにディズニーランドをヒントに豪邸をお化け屋敷にして客を集めるという展開になります。

さらに、インスタやツイッターを駆使して、あっという間にお化け屋敷の情報を海外にまで広め、正子のもとにはハリウッド映画のオーディンションを受けるようにとの誘いが。

オーディションには落ちたものの、ハリウッドの撮影現場近くのコーヒーショップでウェイトレスをしながら出演のチャンスを狙い、日々ぐちを言いながらも楽しい毎日を過ごすという荒唐無稽のあらすじです。

タイトルの「マジカルグランマ」は孫を愛し、いざという時には何をおいても助ける優しいおばあちゃんという典型的な高齢女性を意味する造語で、著者の柚木さんは、そういった生き方に疑問を持った正子に新しい生き方をさせたのでしょうが、新鮮味のあるテーマだとは思えません。

家庭内別居の専業主婦が75歳を過ぎても自由に前向きに生きていれば、一発逆転のホームランを打って、ハリウッドにも行けるし、楽しく人生をおくれる。正子の年齢に近い高齢者のわたしにとって、ちょっと元気の出る話ではありました。

なんとか自分の足で立ち、バットを持ってさえいれば、ホームランを打つチャンスはわたしにもやってくるかもしれません(笑)。「くるかも」と信じて夢を持つことが元気のもと。人生何が起こるか分かりません。

十一面観音

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